アートと科学で海洋汚染に挑む!粟島の挑戦

 
「瀬戸内国際芸術祭2019」の秋会期、三豊市の粟島では、海洋環境に関するアートや科学調査の展示が行われます。

でも、

「なぜアートの祭典なのに、環境問題を話題にするの??」
「なぜ粟島でやるの??」

と、不思議に感じるかもしれません。

 

▼瀬戸内国際芸術祭2019 on 粟島のトップページはこちら
▼展示の様子は、『週刊みとよ ほんまもんRadio!』のブログ記事をご覧ください。

 

海の環境問題とは?

粟島・佐藤さん

三豊市の父母ヶ浜。世界各地から流れ着くゴミをボランティアが清掃し、美しい砂浜を守っている

 

海は、魚をはじめ、私たちの食べ物を育んでくれる場所です。

 

さらに、海は、地球の熱を吸収する力を持っています。さらに、人間が必要な酸素の50%以上を作っているのも実は海の生き物です。

しかし、近年増え続ける二酸化炭素(CO2)は地球温暖化を引き起こし、それによって海の水温上昇や、酸性化が進行。海の生き物たちも危機にさらされています。気候変動は農業にも大きな打撃を与えており、今後、世界で食糧難が危惧されています。

 

海を漂うマイクロプラスチックの問題も、悪化しています。プラスチックゴミが、川や海を漂ううちに細かく砕かれ、魚などが摂取してしまう。そして、それを食べる人間も、プラスチックに含まれる有害物質によって健康を害する恐れがあります。

 

また、温暖化や海水の酸性化、沿岸の開発、海の汚染によって、サンゴ礁が死滅する地域も増えており、今後、サンゴ礁の周辺に住む5億人もの人が生活できなくなる恐れもあります。

 

こうした状況に対し、私たちは何ができるのでしょうか?

 

▼海の環境問題に関する情報は、TARA JAPANサイトを参照ください。

TARA JAPANと三豊市が連携協定!

粟島・佐藤さん

タラ号 写真提供:TARA JAPAN ©Sacha Bollet/Foudation Tara Océan

 

フランスの人気ブランド「アニエスベー」。ロゴTシャツやカーディガンプレッションといったアイテムをお好きな方も多いのではないでしょうか?

 

アニエスベー・フランス本社のCOO(最高執行責任者)を務めるエチエンヌ・ブルゴワさんは、大の船好き。愛する美しい海を守るため、デザイナーのアニエスベーと一緒に「Tara Océan財団」を設立し、2003年以降、科学探査船「タラ号」を通して海の調査に取り組んできました。

 

その一方で、三豊市も、市民が海岸清掃活動に熱心に取り組んできました。さらに、ゴミを資源に変える先進的システム「トンネルコンポスト方式」を日本で初めて導入するといった取り組みも進めています。

 

粟島・佐藤さん

エチエンヌ・ブルゴワさん(左)と三豊市の山下昭史市長

 

こうした中、2019年9月3日、Tara Océan財団の日本事務局「一般社団法人TARA JAPAN」と三豊市は、粟島を拠点に海洋環境教育や啓発活動をしていくことを目指し、連携協定を結びました。

 

かつて世界の海を駆け巡る船員たちの島だった粟島が、今、グローバルな問題に取り組む拠点へ生まれ変わろうとしています。

 

▼タラ号が三豊市に寄港した時の様子はこちら!

▼三豊市のトンネルコンポスト方式についてはこちら!

 

アートを通じて海洋環境問題を啓発

粟島・佐藤さん

(左から)TARA JAPANのローラン・パトゥイエ理事、パトゥイエ由美子事務局長、アーティストの菊地良太さん、エチエンヌ・ブルゴワさん、アーティストの表良樹さん、日比野克彦さん

 

粟島では今後、海洋環境問題に関わるさまざまな活動に取り組んでいく予定ですが、その中には、科学調査の展示とともに、アートを通じた啓発活動が含まれています。

 

TARA JAPANと三豊市をつなぐきっかけをつくってくれたのは、アーティストの日比野克彦さんでした。日比野さんは、ブルゴワさんの長年の友人で、「瀬戸内国際芸術祭2013」以来、粟島にも深く関わっています。

粟島・佐藤さん

日比野さんが瀬戸内国際芸術祭2013で制作した「ソコソコ想像所」。海の底で拾ったものから、さまざまな想像を広げる

 

日比野さんは、「見えないつながり」へ想像力を育むことこそ、アートの力だと語ります。

 

この世界は、見えないところで、様々なものがつながっています。海の向こうの森林が生み出した酸素が、私たちを生かしてくれたり。逆に、私たちが日本で出したプラスチックゴミが、外国の海に住む生き物を苦しめたり。

 

海洋環境のように複雑な問題に取り組むには、こうした世界のつながりに対する想像力が大切です。

粟島・佐藤さん

タラ号の乗船アーティスト、大小島真木さんが粟島島民と一緒に作った作品の一部。2018年に粟島で展示された

 

さらに、アートには言葉の壁を超える力があります。言葉が通じない外国人同士でも、アートであれば、イメージや五感を通して、共感を生むことができます。

 
「瀬戸内国際芸術祭2019」には、インド人アーティストのマユール・ワイェダさんをはじめ、多くの外国人アーティストたちが参加しています。

世界の人々と手を携えて、グローバルな課題である海の汚染に取り組む。その上で、アートは大きな可能性を秘めているのです。

ローカルからグローバルへ

粟島・佐藤さん

粟島の西浜での清掃活動

 

もう1つ重要なのが、「ローカルからグローバルへ」という視点。

 

海洋環境の問題は、世界の問題です。でも、その始まりは、1つ1つの地域から出されたゴミや生活排水、CO2などだったりします。

だから、それぞれの地域が、足元からできることをすることが、世界の問題の解決にもつながります。

 

特に、市内に多くの美しい砂浜がある三豊市は、海とのつながりが感じやすい場所。海洋環境の問題を、実感をもって学ぶのに適した場所です。

 

三豊で環境活動に参加してみませんか? 

粟島・佐藤さん

瀬戸内国際芸術祭2013の際に整備された海に浮かぶ美術館「一昨日丸」。「太古からの海と命のつながり」を想起させる場所。瀬戸内国際芸術祭の期間外は、蔦島にいく航路で活用されている。

 

海を守るためには、日常生活の中で、プラスチックゴミを出す量を減らす努力といった、さまざまな取り組みができます。

同時に、三豊市内での活動に参加することもできますよ!

 

三豊市は「日本一の夕日の絶景スポット」と言われる父母ヶ浜をはじめ、多くの見どころがあります。粟島でのアート鑑賞を含めた観光を楽しみつつ、ぜひこうした活動にも参加してみてくださいね!

 

① 父母ヶ浜の清掃活動

三豊市では、市民たちが海岸清掃活動を行い、きれいな海を守っています。特に父母ヶ浜では、毎月、第1日曜日の朝6時(11~3月は朝7時)から清掃活動をしています。誰でも参加可能のため、近年は、観光しつつ参加する人も増加中。

▼父母ヶ浜についてはこちらも参照ください。

 

② 山・農地の整備活動

山から出た栄養分が川を通じて海に流れこみ、海の生き物を潤す…。豊かな海を守ることと、山を守ることは深い部分でつながっています。
三豊市にあるNPO法人、まちづくり推進隊高瀬では現在、荒廃の進む山中の茶畑の再生や天然記念物のコウノトリを生育環境の整備、休耕田での農作業体験など、季節ごとにさまざまな活動に取り組んでいます。

 
市外の方が参加できる活動も多数あるので、興味のある方は、まちづくり推進隊高瀬の事務局に連絡してみてください。

 

▼お問合せはこちら

▼まちづくり推進隊高瀬のHPFacebookはこちら。

 

③ バイオマス資源化センターの見学

三豊市に建てられた、日本初の「トンネルコンポスト方式」ゴミ処理センター。燃やせるゴミを固形燃料として再利用できるようにする先端施設です。見学申し込みは、指定管理業者である株式会社エコマスターまで。

▼エコマスターのHPはこちら

 

③「明後日バッグ」
 

明後日バッグん

明後日バッグ

瀬戸内国際芸術祭2013において、日比野さんがデザインしたエコバック。「未来にゴミとなるような遺物を残さない」という思いが込められています。粟島にある武内商店で販売されていますよ。また、三豊市のホームページに、三豊市にある船「一昨日丸」との裏話も掲載されています。